いつか遺書になる

大事な気持ちだけカプセルに閉じこめて取っておきたい

コスモロジー

 

私が世界をどう捉えているかについて、岩井俊二監督『リップヴァンウィンクルの花嫁』で真白のいったことが最も近いなと思う。

 

「あたしね、コンビニとかスーパーで買い物してる時にね、お店の人がさ、あたしの買ったもの、せっせとさ、袋に入れてくれてる時にさ……あたしなんかのためにさ、その手がせっせと動いてくれてんだよ。

あたしなんかのためにさ、せっせと、お菓子やお惣菜なんかをさ、袋に詰めてくれてるわけその手が。

それ見てるとさ、なんか胸がギューってしてね、なんかもう泣きたくなる。


あたしにはね、幸せの限界があんの。もうこれ以上無理ーって限界。

たぶんそこらの誰よりもその限界が来るのが早いの、ありんこより早いんだその限界がね。

だってさ、この世界はさ、ほんとは幸せだらけなんだよ。

みんながよくしてくれるんだ。

宅配便の親父はさ、あたしがここって言ったとこまで、重たい荷物運んでくれるしさ、雨の日に、知らない人が傘くれたこともあったよ。

でもさ、そんな簡単に幸せが手に入ったら、あたし壊れるから。

だから、せめてお金払って買うのが楽。

お金ってさ、たぶんそのためにあんだよきっと。

人の真心とかさ、優しさとかがさ、あんまりそんな、はっきりくっきり見えちゃったらさ、人は、だってもうありがたくてありがたくてさ、みんな壊れちゃうよ。

だからさ、それ、みんなお金に置き換えてさ、そんなの見なかったことにすんだよ。

だから、優しいんだよ。この世界はさ。

だからあたしは、お金払って買うんだ。お金払って買うの。だってもう限界なんだもん。

だからそんな目で見ないで…あたし壊れる。」

 

岩井俊二リップヴァンウィンクルの花嫁』

 

「(残酷に見える世界は)本当は優しい」というのを明示する作品って意外とないんじゃないかなと思う。逆はたくさんあるけれど。

綺麗事に聞こえるかもしれないけど、本当に、少なくとも、私の世界は優しさに満ちているんだよね…そうとしか言えない。