いつか遺書になる

大事な気持ちだけカプセルに閉じこめて取っておきたい

中野駅・北口

 

5月の夜、

駅前に弾き語りしてる歌の上手いお兄さんがいて、

その近くとも遠くともつかぬ距離にいるエレキギター弾きのお兄さん──生バンドカラオケの宣伝らしい──が気まぐれに演奏に参加してて、

近寄って弾き語りに投げ銭する人がいて、

遠巻きにガードレールに座って眺める人がいて、

曲が終わると遠巻きの客も含めて全員が拍手してて(指笛も鳴ってた)、

駅前のロータリーというまとまりのない空間で一瞬だけ皆がまとまったように見えたその瞬間が本当に好きだった。


隣には、一緒にそれを聴いて投げ銭をしてくれる友人がいて、こんなに幸せでいいのかと思った。

弾き語りも実際にすごくよかったけど、本当は帰るのが名残惜しくて、少しでも時間を引き延ばしたくて歌を聴いていた。


帰り際に友人の彼氏との共有カレンダーに混ぜてもらったとき、なんとなくだけど、違国日記で朝と槇生ちゃんと笠町くんが横並びでコールドプレイ観てるシーンを思い出して、ちょっと泣きそうになった。

私はひとりで生きてひとりで死ぬことになるかもしれないけど、そうじゃない瞬間もあるのかもしれない。

そういう瞬間を作ってくれることを感謝していると、どう伝えればわかってもらえるだろうね。